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小児のむし歯予防にフッ化物は本当に必要?|子どものフッ素の安全性と正しい使い方


子どものフッ素使用について不安や疑問を抱く保護者が、坂寄歯科医院の三木先生に相談している様子を描いた、フッ素の安全性と使い方を説明する導入用イラスト画像。

こんにちは。坂寄歯科医院の院長、三木です。

日々の診療で保護者の方から「フッ素って本当に安全なんですか?」「いつから使い始めればいいんですか?」というご質問をたくさんいただきます。インターネット上にはさまざまな情報があふれていて、何を信じればいいのか迷ってしまいますよね。

今日は、お子さんのむし歯予防に欠かせないフッ化物について、現場で診療にあたる歯科医師として、また3児の父親として、私自身の経験も交えながらお話しします。




なぜ今、フッ化物なのか?

実は日本の子どもたちのむし歯は、この30年で劇的に減っています。

1980年代には12歳の子どもの約9割がむし歯を経験していましたが、2016年には3割程度にまで改善しました。

平均むし歯数も1人当たり4本以上から0.3本前後へ大幅に減少しています。

今後もこの変化は更に進んでいくことが期待されます。

この変化をもたらした最大の要因が、フッ化物配合歯磨剤の普及と適切な使用法の啓発です。

一方で、むし歯は今も世界で最も蔓延している病気のひとつです。

乳歯のむし歯は全世界で約5億人の子どもに影響を及ぼしています。

日本国内でも、地域や家庭によってケアの格差があり、むし歯がない家庭は全くなく、ある家庭では集中して大量に発生してしまうケースも少なくありません。




私自身の実践:子どもたちにもフッ化物を

私には3人の子どもがいますが、3人とも定期的にフッ化物塗布を行っています。

歯科医師だからというだけでなく、親として

「予防できる病気で子どもに痛い思いをさせたくない」

という思いからです。

夜の仕上げ磨きでは必ずフッ素入り歯磨き粉を使いますし、寝る前にはフッ化物洗口を行っています。

効果は分かりやすく、おかげさまで、今のところむし歯ゼロを維持できています。

もちろん、これは私の家庭だけの話ではありません。

当院に通ってくださっている多くのお子さんたちも、フッ化物の適正使用・食生活の改善によって乳歯時期にむし歯があったお子さんでも、永久歯になってからはむし歯を作らずに住んでいるという事例を多く経験しています。




フッ化物がむし歯を防ぐ仕組み

フッ化物がエナメル質を酸に溶けにくくすること、初期むし歯の再石灰化を助けること、むし歯菌の活動を弱めることを、1本の歯と菌キャラクターの図で示した、フッ化物応用によるむし歯予防メカニズム解説画像。

フッ化物は歯の表面に作用して、次のような効果を発揮します。

1. 歯を強くする 歯の表面のエナメル質にフッ化物が取り込まれると、酸に溶けにくい構造に変化します。これにより、むし歯菌が作り出す酸から歯を守ることができます。

2. 初期むし歯を修復する ごく初期の段階で歯が溶け始めても、フッ化物があると再び歯が修復される「再石灰化」という現象が促進されます。

3. むし歯菌の活動を抑える フッ化物はむし歯菌そのものの働きも弱めるため、酸の産生を抑えることができます。

重要なのは、これらの効果は歯が生えた後の「局所的な作用」によるものだということ。つまり、毎日継続的に歯の表面にフッ化物を届けることが大切なのです。




「フッ素は危険」という誤解について

フッ素は危険かIQが低下するのかとスマホの情報を見て不安そうにしている親子と、歯科医院の診療室で水道水の適正濃度・歯磨き粉の適量・フッ素症はごく軽い白斑が多いことをホワイトボードで説明し、極端な過剰摂取にはバツ印、適正量なら安全と示している日本人歯科医師を描いた、子どものフッ素の安全性とむし歯予防を解説する坂寄歯科医院ブログ用イラスト画像。

保護者の方からよく心配されるのが安全性です。率直にお答えします。


フッ素症(斑状歯)のリスクは?

適切な量を守れば、フッ素症のリスクは極めて低いです。

フッ素症は、歯の形成期(おおむね8歳以下)に過剰なフッ化物に曝露されると、エナメル質にごく軽い白濁が生じることがあるという現象です。しかし大切なのは次の点です。

  • 適正量を使えば発生率はごく低い

  • 仮に生じても大半は目立たない程度の軽いもの

  • むし歯で歯が茶色く穴が開いたり銀歯になる方が、見た目への影響はずっと大きい

推奨濃度の水道水・歯磨剤を適正量で使った場合、発現しても大半は軽度の白斑で、生活への影響はほとんどないことがわかっています。


知能への影響は?

インターネット上で「フッ素でIQが下がる」という情報を見て不安になる方もいらっしゃいます。

この情報の多くは、飲料水に自然に非常に高濃度のフッ化物が含まれている特殊な地域での研究に基づいています。日本や先進国で通常使用される適正レベルのフッ化物使用とは、まったく状況が異なります。

WHOなどの公的機関をはじめとして、各種レビューや専門学会の総合評価では、公衆衛生的に推奨されているレベル(例:水道水0.7ppm前後や通常の歯磨剤使用)で子どものIQが低下するとは結論づけられていません。

一方で、高濃度地域の観察研究ではIQ低下を示唆する報告もあり、その妥当性については現在も検証が続いている段階です。


急性中毒の心配は?

通常の使用で中毒を起こす可能性はほぼありません。

体重10kgの幼児が有害症状を示すには、一度に標準的な歯磨き粉チューブの半分以上を飲み込む必要があります。現実的には起こりにくい量です。

それでも万が一に備え、歯磨き粉は子どもの手が届かない場所に保管し、適量だけを使うよう心がければ安心です。




年齢別・正しいフッ化物の使い方

0〜2歳・3〜5歳・6〜12歳・12歳以上の4区分ごとに、フッ素濃度、歯磨き粉の使用量、回数、仕上げ磨きやフッ化物洗口などのポイントを親子のイラストとともに一覧で示した、小児の年齢別フッ素入り歯磨き粉の使い方ガイド画像。

乳幼児期(0〜2歳)

最初の歯が生えたらすぐ開始

  • フッ素濃度:1000ppmの歯磨き粉

  • 使用量:米粒大以下(ごくわずか)

  • 回数:1日2回(特に就寝前は必須)

  • ポイント:保護者が仕上げ磨き。磨いた後は軽く吐き出すだけで、うがいはしない

この時期は飲み込むことを心配される方が多いのですが、米粒大程度なら問題ありません。むしろ、うがいをしすぎてフッ化物を洗い流してしまう方がもったいないのです。

むし歯リスクが高い赤ちゃんの場合、生後6か月以降から歯科医院でのフッ化物塗布も検討しましょう。

幼児期(3〜5歳)

習慣を定着させる時期

  • フッ素濃度:1000ppm程度

  • 使用量:切り豆大(5mm程度)

  • 回数:1日2回

  • ポイント:吐き出しはできても、ブクブクうがいは不要

この年齢でも保護者の仕上げ磨きは必須です。自分で磨けるようになっても、磨き残しが多いためです。

むし歯リスクが高いお子さん(すでに複数のむし歯がある、おやつが多い、歯磨きが不規則など)は、歯科医院でフッ化物塗布を定期的に受けることをお勧めします。

学童期(6〜12歳)

複数の方法を組み合わせる

  • フッ素濃度:1000〜1500ppm

  • 使用量:1cm弱(大人と同程度)

  • 回数:1日2回(朝晩)

  • 追加対策:フッ化物洗口の開始

6歳臼歯が生えてくる重要な時期です。この時期の奥歯は溝が深くむし歯になりやすいため、必要に応じたシーラント処置とフッ化物応用を併用します。

学校や家庭でフッ化物洗口(フッ素入りうがい液)を取り入れると、さらに予防効果が高まります。

思春期以降(12歳〜)

自己管理を確立する

  • 市販の1450ppm程度の歯磨き粉を使用

  • 朝晩2回のブラッシングを習慣化

  • フッ化物洗口液の自主利用

部活や受験で忙しくなり、反抗期も合間って諸々難しくなってくる時期ですが、セルフケアの習慣を確立する大切な時期でもあります。

矯正治療中の場合は、装置の周囲にプラークが溜まりやすいため、フッ化物洗口を就寝前に追加すると効果的です。




家庭でできる実践ポイント

歯磨き後のうがいを最小限にすること、就寝前のフッ素入り歯磨きを重視すること、年齢に応じた適量を守ること、歯科医院での定期的なフッ化物塗布を組み合わせることなど、家庭で行えるフッ素活用のポイントを親子の歯磨き場面と診療室のイラストで説明した画像。

1. 歯磨き後のうがいは最小限に

これは意外に思われるかもしれませんが、磨いた後は少量の水で1回軽くすすぐだけ、もしくはうがいをしないことが推奨されています。

せっかくのフッ化物を大量の水で洗い流してしまうと、効果が半減してしまうからです。

もし使用するにしてもペットボトルの蓋半分程度のごく微量の水にしておくようにしましょう。

2. 就寝前の歯磨きを最重視

寝ている間は唾液の分泌が減り、むし歯になりやすい環境になります。就寝前のフッ素入り歯磨きは、一日の中で最も重要です。

3. 適量を守る

「もったいない」と極端に少量しか使わないのも、「たくさん使えば効果的」と多量に使うのも、どちらも適切ではありません。年齢に応じた適量を守りましょう。

4. 定期的な歯科医院でのケア

家庭でのフッ化物応用だけでなく、歯科医院での定期的なフッ化物塗布を組み合わせることで、予防効果は大きく高まります。

特にむし歯リスクが高いお子さんには、塗布をお勧めしています。




予防効果は科学的に証明されています

フッ化物のむし歯予防効果は、世界中の研究で実証されています。

  • フッ化物配合歯磨剤の使用で、乳歯の新規むし歯発生が約30%減少

  • 歯科医院でのフッ化物塗布(年2回以上)で、乳歯のむし歯が37%、永久歯が43%減少

  • フッ化物洗口で永久歯のむし歯が約23〜26%減少

これらは単なる理論ではなく、実際の臨床データに基づいた数字です。

複数の方法を組み合わせることで、さらに高い予防効果が期待できます。




当院での取り組み

坂寄歯科医院では、すべてのお子さんの定期健診で以下を実施しています。

  • フッ化物塗布

  • 家庭でのフッ素使用状況の確認

  • 年齢とリスクに応じた個別の予防プラン提案

  • 保護者の方への丁寧な説明

むし歯が多発してしまっているお子さんには、治療と並行して生活習慣の聴取をさせていただき必要に応じてその改善案を提案します。




私からのお願い

フッ化物は、適切に使えば非常に安全で、効果的なむし歯予防法です。

私は歯科医師として、また一人の親として、すべての保護者の方にお伝えしたいことがあります。

お子さんを定期的に歯科医院に連れて行ってください。

当院でなくても構いません。お近くの、信頼できる歯科医院で定期的にフッ化物塗布を受け、家庭でもフッ化物配合歯磨剤を適切に使ってください。

むし歯は予防できる病気です。痛みで苦しんだり、何本も怖い思いをしてまで歯を削って治療したりする前に、予防という選択肢があります。

お子さんの将来の口腔健康は、今この瞬間の小さな習慣の積み重ねで決まります。




よくある質問


Q. フッ素入り歯磨き粉はいつから使えますか?

A. 最初の歯が生えたらすぐに使い始めることができます。生後6か月頃からの使用が推奨されています。


Q. 子どもがフッ素入り歯磨き粉を飲み込んでしまいます

A. 年齢に応じた適量(米粒大〜エンドウ豆大)であれば、多少飲み込んでも問題ありません。むしろ完全にうがいで洗い流してしまう方が予防効果が下がります。


Q. フッ化物塗布はどのくらいの頻度で受ければいいですか?

A. 一般的には3〜6か月ごとが推奨されています。むし歯リスクが高いお子さんの場合は、更に高頻度の塗布をお勧めします。


Q. 学校のフッ化物洗口に参加させるか迷っています

A. 多くの研究で安全性と効果が実証されています。集団で実施される場合、継続しやすく予防効果も高いため、参加をお勧めします。


Q. フッ化物塗布は保険適用外ですか?

A. 昔はそうでしたが、現在は口腔内の状況次第では保険適応にてフッ化物塗布を受けることができますので、ご安心ください。




まとめ

笑顔の白い歯のキャラクターを中心に、フッ化物を適正に用いること、最初の歯が生えた時期からのケア、年齢に応じた量、家庭でのブラッシングと歯科医院での定期管理を組み合わせてむし歯予防に取り組む大切さをメッセージとアイコンで整理した、子どものフッ素応用まとめ用イラスト画像。
  • フッ化物は適正に使えば安全で、高い予防効果がある

  • 最初の歯が生えたらすぐフッ素入り歯磨き粉を開始

  • 年齢に応じた濃度と使用量を守る

  • 家庭でのケアと歯科医院での定期塗布を組み合わせる

  • むし歯は予防できる病気です

お子さんの健やかな成長を、口の健康からサポートしていきましょう。



参考文献




ご予約・お問い合わせ

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