この記事の要点(直接回答)
- 白い詰め物(コンポジットレジン)には、「○年で交換」という決まった寿命はありません。奥歯の長期研究では、1年あたりにやり直しが必要になる割合はおおむね1.5〜2.4%程度と報告されています。
- 10年以上、条件によっては20年以上使われている詰め物も報告されています。一方で、数年でやり直しになる詰め物もあります。
- やり直しの主な原因は、詰め物のまわりに新しくできるむし歯(二次う蝕)と、詰め物や歯が割れることです。
- 寿命を大きく左右するのは、むし歯のなりやすさと詰めた範囲の大きさ。強い噛みしめや、治療する側の条件も関係します。
- 小さな欠けなら、全部を外さずに部分的に直せる場合があります。「やり直すたびに大きくなる」流れを避ける考え方です。
こんにちは。坂寄歯科医院 院長の三木です。
「この白い詰め物、何年くらいもちますか?」——むし歯を治したあと、よくいただく質問です。
正直にお答えすると、「○年もちます」とは言えません。同じ白い詰め物でも、お口の状態や詰めた大きさによって、もち方がかなり変わるからです。この記事では、長期の研究で分かっている数字と、何がもち方を左右するのかを、分かっていないことも含めて整理します。
保険の白い詰め物(コンポジットレジン)とは?
コンポジットレジンとは、歯の色に近い樹脂系の材料を、むし歯を取った部分に直接詰めて固める治療です。日本の保険診療でも、条件を満たせば使える標準的な治療のひとつです。自費のダイレクトボンディングも、同じコンポジットレジンという材料を使った治療です。
なお、「保険か自費か」は制度上の区分で、寿命の順位を表すものではありません。この点はあとで詳しく触れます。材料の種類や保険との違いはコンポジットレジン修復とはのページでも説明しています。
白い詰め物は何年もつ?研究で分かっている数字
結論として、白い詰め物に決まった寿命はありません。奥歯の長期研究では、1年あたりにやり直しが必要になる割合(年間失敗率)はおおむね1.5〜2.4%程度で、10年以上、条件によっては20年以上使われている詰め物も報告されています。
奥歯の白い詰め物の長期データ
- 12件の研究・奥歯の詰め物2,816本をまとめた解析:年間失敗率は5年時点で1.8%、10年時点で2.4%
- 22年間の追跡研究(362本):年間失敗率は材料によって1.5%と2.2%
- 27年間の追跡(ランダム化比較試験):全体の成功率は56.5%、年間失敗率1.6%
- 29年間の追跡研究:生存率は12年で81.6%、29年で71.4%
年間失敗率2%というのは、「毎年100本のうち2本前後に何らかのやり直しが起きる」という集団の数字です。「2%だから50年もつ」と計算できるものではありません。失敗の起き方は時間とともに変わるからです。
また、20〜30年の長期データは、1980〜90年代に詰めた材料の成績です。今の材料なら必ずもっと長い、とも、昔の数字がそのまま当てはまる、とも言い切れません。新しい材料には、まだ20年分の追跡期間そのものがないからです。
前歯については、研究ごとのばらつきが大きく、17件の研究をまとめた解析でも年間失敗率は0〜4.1%と幅がありました。前歯は欠けや割れに加えて、色や形の見た目の理由でやり直すこともあります。
やり直しになる一番の原因は何?
長い目で見たときのやり直しの原因は、大きく「詰め物のまわりに新しいむし歯ができること(二次う蝕)」と「詰め物や歯が割れること」の2つです。
先ほどの2,816本の解析では、やり直しになった569本のうち、二次う蝕が221本(約39%)、詰め物そのものの破折が148本(約26%)、歯の破折が77本(約14%)でした。27年間の追跡研究でも、やり直しの54.1%が二次う蝕でした。
ここで大切なのは、二次う蝕を「材料が古くなって、すき間からむし歯になった」とだけ考えないことです。後で触れるように、むし歯になりやすい方ほど二次う蝕のリスクが高くなります。詰め物の問題だけでなく、お口全体のむし歯のリスクも関わっています。
反対に、変色や小さな段差については、長期の研究でそれぞれ何%が原因でやり直したか、はっきりした数字は示されていません。少し色が変わっただけで「交換が必要」とは限りません。
長持ちするかどうかを左右するのは?
研究で繰り返し確認されているのは、むし歯のなりやすさと詰めた範囲の大きさの2つです。
むし歯のなりやすさ
2,816本の解析では、むし歯のリスクが中〜高い方は、低い方に比べて失敗のリスクがおよそ2〜3倍でした(分析の条件によって約1.7〜3.0倍と幅があります)。10年時点の年間失敗率も、低リスクの方が1.6%だったのに対し、中リスクで4.1%、高リスクで4.6%でした。材料の種類による違いよりも、この差のほうがはっきりしていました。
詰めた範囲の大きさ
同じ解析では、詰めた面が1面増えるごとに、失敗のリスクが小臼歯で約1.5倍、大臼歯で約1.2倍になっていました。噛む面だけの小さな詰め物と、歯と歯の間まで大きく詰めた詰め物を、同じ寿命で考えることはできません。
強い噛みしめ
奥歯の詰め物306本を10〜18年追った研究では、やり直しの82%が、むし歯のリスクか噛み合わせの強い負担(咬合ストレス)のどちらかを持つ方に起きていました。むし歯のリスクがある方では二次う蝕が、噛む力の負担が大きい方では破折が、主な原因になっていました。ただし「歯ぎしりがあれば必ず短くなる」という意味ではありません。
治療する側の条件
日本の大学病院で、24人の歯科医師が詰めた503本を最長11年追った研究では、主に担当した歯科医師の詰め物の10年生存率が84.2%、ほかの歯科医師の詰め物では71.8%でした。治療する側の条件も無視できないことを示す日本のデータです。ただし症例の選び方の違いなども含まれるため、「経験年数の差だけでこの差が出た」とは言えません。
ラバーダムを使えば長持ちする?
ラバーダムとは、治療する歯の周りにゴムのシートをかけて、唾液や湿気から隔離する方法です。正直にお伝えすると、「ラバーダムを使ったから○年長持ちする」と示した、大人の奥歯の長期データは十分ではありません。前歯での古い研究や、子どもの乳歯での研究では、ほかの防湿方法と比べてはっきりした差が出ていないものもあります。
それでも当院が防湿にこだわるのは、コンポジットレジンが歯に「接着」させて留める材料だからです。唾液や湿気は接着の大敵で、ここを妥協すると、外れたりすき間ができたりする原因になると考えています。
当院では、白い詰め物をこう考えています
当院では、保険・自費を問わず、すべてのコンポジットレジン修復でルーペ(拡大鏡)を使っています。また、むし歯を取って詰め直すときは、しっかり防湿した環境で行うことを基本にしています。防湿に使う器具は診療内容によって異なり、保険診療ではZOO(ズー)と呼ばれるバキューム型の器具を、自費診療ではラバーダムを用いています。
保険のコンポジットレジン (CR) と自費のダイレクトボンディング (DB) は、使う材料そのものの強度に大きな差はありません。違うのは接着工程の精度です。
保険と自費のどちらにするかは、治療後の見た目や、どこまで長く使いたいかによって変わります。当院では、どちらが正解とは決めつけず、それぞれの利点と限界をお伝えしたうえで、患者さんに決めていただいています。
自費のダイレクトボンディングについて
治療内容:自費専用のコンポジットレジンを使い、ラバーダム防湿のもとで歯に直接詰める修復/費用:1歯あたり50,000円(税込)/治療期間:多くは1回(むし歯の大きさや本数によります)/主なリスク:経年による変色や摩耗、強い力での欠け、治療後の一時的なしみ、噛み合わせの状態によっては適応外となる場合があります。自費診療のため健康保険は適用されません。詳しくはダイレクトボンディングのページをご覧ください。
やり直すたびに詰め物は大きくなる?
やり直しのたびに大きくなることは、実際にあります。交換が必要と判断された奥歯の詰め物1,337件を調べた研究では、交換の約70%で、次の詰め物の面数が増えていました。1995年の、銀の詰め物(アマルガム)が中心だった時代の研究ですが、詰め直すと範囲が広がりやすいことを示すデータです。
ただし、「一度詰めたら、被せ物、神経の治療へと必ず進む」という意味ではありません。小さな欠けや、一部分だけの問題であれば、全部を外さずに部分的に直す(修理する)方法もあります。欠けのある白い詰め物50本を「修理」と「全部交換」に分けて10年間追った研究では、すき間やまわりのむし歯、色などの主な評価で、両者の経過はおおむね同じでした(小規模な研究で、形の評価には差がありました)。
もちろん、むし歯が広がっている場合や、歯が大きく割れている場合は、外してやり直す必要があります。どちらがよいかは、実際に見て判断します。詰め物が外れたときの考え方は詰め物が外れたまま放置すると、何が治療を大きくするのかの記事でも触れています。
保険と自費、インレー、どれが一番長持ち?
「この材料なら必ず長持ちする」という順位をつけられるほど、そろった研究はありません。比べる研究ごとに、患者さんのむし歯のリスク、詰める大きさ、歯の種類、使った材料、やり直しの定義が違うからです。
たとえば、銀の詰め物(アマルガム)と白い詰め物を比べた研究でも、子どもを対象にしたある試験では銀の詰め物が良く、別の研究ではむし歯のリスクが低い方では白い詰め物の成績が良く、リスクの高い方の大きな詰め物では銀の詰め物が有利、と結果が分かれています。型取りして作る詰め物(インレー)との比較も、小規模な研究が中心です。
大切なのは、高い材料を選ぶことそのものより、むし歯のリスクを下げることと、できるだけ小さい範囲で治すことです。型取りして作る詰め物とダイレクトボンディングの違いは、別の記事であらためて取り上げる予定です。
詰め物を長持ちさせるために、できることは?
研究で寿命との関係がはっきりしていたのは、むし歯のなりやすさでした。つまり、詰めたあとのむし歯予防が、そのまま詰め物を守ることにつながります。
- 歯と歯の間はフロスや歯間ブラシで清掃する(二次う蝕は歯と歯の間に起きやすいため)
- 定期検診で、詰め物のまわりの小さな変化を早めに確認する
- 食いしばりの癖がある方は、まず癖に気づいて減らすところから始める
食いしばりについては、当院ではいきなりマウスピースを作るのではなく、日中に上下の歯を接触させ続ける癖(TCH)に気づいて減らす指導から始めています。詳しくは歯ぎしり・食いしばりの治療のページをご覧ください。定期検診については定期検診のページでご案内しています。
よくある質問
Q. 保険の白い詰め物は何年くらいもちますか?
決まった年数はありません。奥歯の長期研究では、1年あたりにやり直しが必要になる割合はおおむね1.5〜2.4%程度と報告されていて、10年以上使われている詰め物も多くあります。ただし、むし歯のなりやすさや詰めた範囲の大きさによって、もち方は大きく変わります。
Q. 白い詰め物の色が変わってきました。交換が必要ですか?
色が変わっただけで、必ず交換が必要とは限りません。長期の研究で多いやり直しの原因は、まわりの新しいむし歯と、詰め物や歯の割れです。中でむし歯が進んでいないか、欠けがないかを確認したうえで、交換・部分的な修理・経過観察のどれがよいかを判断します。
Q. 自費のダイレクトボンディングなら、何年もつと保証されますか?
保証できる年数はありません。保険のコンポジットレジンと自費のダイレクトボンディングは、使う材料の強度に大きな差はなく、違うのは接着工程の精度です。どちらの場合も、むし歯のなりやすさや噛む力によってもち方は変わります。
Q. 詰め物が少し欠けました。全部やり直しになりますか?
状態によっては、全部を外さずに欠けた部分だけを修理できる場合があります。研究でも、小さな欠けを修理した詰め物と全部交換した詰め物の経過は、主な評価で10年間おおむね同じでした。ただし、中でむし歯が広がっている場合などは、外してやり直す必要があります。
Q. 詰め物を長持ちさせるために自分でできることはありますか?
詰めたあとのむし歯予防がいちばん大切です。研究では、むし歯のなりやすさが詰め物の寿命と強く関係していました。歯と歯の間の清掃と、定期検診での早めの確認をおすすめします。
免責事項
この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療方針を示すものではありません。研究の数値は集団での結果で、個々の詰め物の使用年数を保証するものではありません。お口の状態や必要な治療は一人ひとり異なるため、最終的な判断は歯科医師の診察を受けた上で行ってください。
参考文献
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Opdam NJ, et al. 12-year survival of composite vs. amalgam restorations. J Dent Res. 2010(う蝕リスク別のアマルガムとの比較)
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