top of page
  • 執筆者の写真三木雄斗

【歯科医師向け】重合収縮のコントロールについて【1級窩洞編】

こんにちは。

今日は表題の通り、患者さん向けではなく、歯科医師向けのブログになります。

現在、レジン充填は全国どころか世界中で行われており、先進国を筆頭に材料も年々進化していき、適用範囲も激しく広がっていってます。

それに対して、医療の現場において十分な知識と技術がない状態で治療を行う事で残念な結果につながっているケースも臨床で多々見かけることが増えてきました。

今回は、ある先生からご要望をいただきましたので、レジン充填において・・・私が最も予後や成功率に影響すると考えている「重合収縮コントロール」について記載していきたいと思います。

こちらの内容を是非ご自身の臨床に落とし込んでいただければ幸いです。


重合収縮はレジン充填である以上必ず考えなけらばならず、

今後もどれだけ材料が進化してもレジンである以上切っても切れないベースとなる部分になりますので、知っておくと非常に有利だと思いますよ。

では本題に入っていきます。

まず重合収縮とは何かという部分ですが・・・

その文字通り、「重合時に収縮を起こす」という事です。

一般的に実臨床上で使用されている光重合型レジンの重合とは、その光の方向に対して収縮が生じます。


図中の赤の矢印が収縮方向で、黄色い部分が収縮によって生じたコントラクションギャップになります。

象牙質とレジンの界面にコントラクションギャップが生じてしまった場合、術後の咬合痛・冷温熱痛などの原因になることが多く、

また二次カリエスになった際に内面にてカリエスが広がる要因となります。


(象牙細管と接する界面に気泡が入った場合も、人工的にコントラクションギャップを形成しているようなものになりますので、もし充填時に気泡が入ってしまったら必ず弾くようにしてください。)


レジン充填の際に重合収縮量を緩和させる代表的な手法は皆さんご存じの通り「積層充填」です。

これはこういった感じで・・・

複数回に分けて固めることで、その都度重合収縮をこまめに発生させる事で一気に大きな重合収縮が起こらないようにする手法の事です。


例とすると車のブレーキに例えるとわかりやすいかもしれません。

急ブレーキをかけるとスリップするかもしれないですし、体に対する負荷も非常に大きく危ないですよね。

だから何回かに分けてブレーキを踏みながら減速していくポンピングブレーキの方を教習所で習いますよね。

例え停止する地点が一緒だったとしても、急ブレーキとポンピングブレーキどっちの方が車や体に負担が少ないかって話なんです。


重合収縮も一緒で、トータルで発生している重合収縮量は変わらないのですが、重合収縮によって生じるギャップの量はぐっと減らすことが出来るようになります。

これらのことを私は重合収縮コントロールと言っています。

重合収縮コントロールにも色々とコツのようなものがありまして・・・。

例えば今回お話しする1級窩洞。

こんな感じで、象牙質が殆どなくなっており、エナメル質しか残っていないみたいな状況の時にはますます気を付ける必要があります。

例えば、このような順序で充填していったとします。



エナメル質は皆さんご存じの通り、光を透過しますので、多くの方は





このように光照射を行うと思います。

※フリー素材を画像処理して書いているので、近遠心方向からの照射に見えますが、頬舌からの照射だと思っておいてください(;・∀・)

※ほんで照射順の①と②が逆でしたね、まぁ許してください(´∀` ;)

この場合で問題になってくるのは光は距離が離れればその分弱くなるという性質があることです。

その為、



最も光から遠く、届きづらいオレンジの部分の重合が不十分になってきます。

それでそのまま③~⑥へと重点を行っていった場合にどうなるかというと・・・



レジンとレジンは比較的強固に接着するので、こういった収縮応力が加わることとなります。

その結果として、図で書かれているような雷部分のエナメル質に対してクラックが入るような力が加わってきます。


それに対して、私が行う充填順序はこちらです。



この充填順で充填していった場合の重合収縮応力の加わる方向は以下の通りとなります。



その結果、重合収縮にて生じる可能性があるコントラクションギャップの部位はオレンジの部分のようになります。


最初の充填順序で行くよりも重合収縮によって生じるギャップ部分が少なくなるのがイメージできるかと思います。

その結果、歯質への補強効果も出るため、クラックが生じるリスクを非常に少なくすることが出来ます。

そもそも重合収縮によりクラックが生じた場合に生じうる問題点としては

・短期的に遊離エナメルの破折が生じる危険性がある

・クラック部分を通って、カリエスが内面に侵入する危険性がある

・術後の知覚過敏症状、咬合痛が生じる可能性が高まる

といったものがあります。


要は

CR自体の長期予後が悪くなるって言うのと、術後の不快感の原因になり得るんですよね。

その為、上記のような症例において、クラックを生じるリスクを最小化することがCRの長期予後を達成するうえで重要となってきます。



次は気が向いたときに2級窩洞編を作りたいと思います。


一部先生からお礼にアマゾンギフト券を頂けるそうなので楽しみにお待ちしております

(o´艸`)ムフフ

閲覧数:1,879回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page