こんにちは。坂寄歯科医院 院長の三木です。
子どもが歯医者を好きになるか苦手になるかは、診察台で何をするかよりも、その前に親御さんがかけた「言葉」で大きく左右されることがあります。よかれと思ってかけた一言が、かえって子どもの不安を強めてしまう——診療の現場では、そんな場面に何度も出会います。
この記事では、子どもを歯医者嫌いにしないために避けたい声かけと、代わりに伝わる声かけ、そして年齢別の伝え方を、取手市の当院での小児対応の経験を交えながらお伝えします。今日からすぐ使える「言葉の選び方」に絞ってまとめました。
この記事の要点(直接回答)
- 子どもは「痛い」「注射」といった言葉そのものに反応します。否定形でも口に出すと逆効果になりやすいです。
- 避けたい代表は「痛くないよ」「我慢して」「悪い子は歯医者さんに連れて行くよ」。不安や"罰のイメージ"を植えつけます。
- 代わりに、これから起きることを具体的・前向きに伝えます(例:「お口をピカピカにしようね」)。
- 歯科ではTell-Show-Do(説明→見せる→行う)という方法で、子どもが「次に何をするか」わかった状態で進めます。
- 当院ではまず練習をして、できたらほめる進め方をとり、どうしても難しい場合は無理せず専門機関を紹介します。
なぜ"言葉"で子どもの不安は強くなるのか?
結論から言うと、子どもは大人以上に「言葉そのもの」と「親の表情・声色」から状況を読み取るからです。まだ歯科で何が起きるか知らない子にとって、最初の手がかりは親御さんの一言です。そこに不安がにじんでいると、「ここはこわい場所なんだ」と学習してしまいます。
特に気をつけたいのが否定形です。「痛くないよ」と言っても、子どもの耳に強く残るのは「痛い」という単語のほうです。大人が「緊張しないで」と言われてかえって緊張するのと同じで、否定形は打ち消したいはずの不安をむしろ呼び起こしてしまいます。
避けたい声かけ ワースト5
まずは、現場でよく見かける「つい言ってしまいがちだけれど避けたい」声かけを5つ挙げます。どれも親御さんの愛情から出る言葉ですが、子どもには逆に伝わってしまうことがあります。
| 避けたい声かけ | なぜ避けたいか |
|---|---|
| 「痛くないよ」 | 「痛い」という言葉に反応してしまう。もし少しでも痛むと「約束が違う」と信頼が揺らぐ。 |
| 「我慢して」 「頑張って」 | これから"我慢が必要なつらいこと"が起きると予告してしまい、身構えさせる。 |
| 「悪い子は歯医者さんに連れて行くよ」 | 歯科を"罰の場所"として印象づける。受診そのものへの恐怖につながる。 |
| 「ちゃんとしないと先生に怒られるよ」 | 歯科スタッフを"こわい人"にしてしまい、安心して口を開けられなくなる。 |
| 「注射するよ」 「歯を抜くよ」 | 具体的な処置名を先に出すと不安が急に強くなる。処置の説明は歯科に任せるのが安心。 |
治療が終わったあとに「あんたが歯磨きちゃんとしないからでしょ!」と言ってしまう——これも避けたい声かけです。歯磨きをしていても甘いものをたくさん食べていれば無意味ですから、むし歯は食生活を握っている親御さんしだいなところがあります。そもそも小学校卒業までは仕上げ磨きをした方がいいと言われているので、「歯磨きしないから」と子どもだけを責めるのは的外れなんです。歯医者を"叱られる場所"にしないためにも、終わったあとは「最後までできたね」とほめてあげてほしいと思います。
代わりに伝わる声かけ 5パターン
では、どう言い換えればよいのでしょうか。ポイントは「これから起きることを、具体的に・前向きに伝える」ことです。子どもは見通しが立つと安心します。次の5パターンは、当院でもおすすめしている言い換えです。
| 伝わる声かけ | ねらい |
|---|---|
| 「お口をピカピカにしようね」 | 受診の目的を前向きに伝える。"こわいこと"ではなく"よいこと"だと印象づける。 |
| 「お口を開けて、歯を数えるだけだよ」 | これから起きることを具体的に予告し、見通しを与えて安心させる。 |
| 「終わったら一緒に帰ろうね」 | "必ず終わりがある""親はそばにいる"という安心感を伝える。 |
| 「上手にお口を開けられたね」 | できたことを具体的にほめる。次回への自信につながる。 |
| 「わからないことは先生に聞こうね」 | 処置の説明を歯科に委ねる。子どもが自分から質問できるようになる。 |
Tell-Show-Do(テル・ショー・ドゥ)とは?
Tell-Show-Doとは、子どもの不安を減らすために歯科で広く使われている進め方で、①これからすることを言葉で説明し(Tell)、②実際に道具などを見せて(Show)、③それから行う(Do)という3つの順番のことです。「次に何をされるかわからない」状態が一番こわいので、先に説明して見せることで、子どもが納得してから処置に入れます。家庭での声かけも、この「先に具体的に伝える」考え方と相性がよいのです。
子どもの歯科不安と行動的アプローチ
子どもの歯科不安を和らげる方法として、Tell-Show-Doをはじめとした行動的なアプローチ(コミュニケーションによる誘導)が、米国小児歯科学会(AAPD)の行動誘導ガイドライン等で基本的な手法として位置づけられています。子ども本人にわかる言葉で説明し、見通しを持たせることが重視されています。(AAPD: Behavior Guidance for the Pediatric Dental Patient)
年齢別の伝え方
同じ「伝える」でも、年齢によって響く言葉は変わります。発達段階に合わせると、声かけはぐっと届きやすくなります。
0〜2歳:言葉より「親の表情と安心」
まだ言葉での説明が十分に伝わらない時期です。この年代は親御さんが笑顔でリラックスしていることが何よりの声かけになります。膝の上で受診できることも多く、親の落ち着いた声色そのものが安心材料になります。痛みや困りごとがないうちに「慣れる場所」として通い始めるのがおすすめです。
3〜5歳:「具体的な言葉」と「見通し」
言葉が伝わるようになり、同時に怖がりやすい時期でもあります。「お口を開けて数えるだけだよ」のように、これから起きることを具体的に、短く伝えると安心します。終わったら「できたね」とすぐほめると、次につながります。抽象的な「頑張ろう」より、具体的な予告が効きます。
6〜9歳:「仕組みの説明」と「自分で決める感覚」
理屈がわかるようになるので、「どうしてするのか」を簡単に説明すると納得して取り組めます。「むし歯のばい菌をやっつけるよ」など、目的を伝えるのが有効です。「自分でお口を開けてみる?」と、本人に小さな選択を委ねると、主体性が生まれて協力してくれやすくなります。
10歳以上:「対等な情報共有」
子ども扱いを嫌がる年代です。大人に近い形で、何をするのか・なぜ必要なのかを率直に伝えると信頼してくれます。痛みの可能性も含めて正直に説明したほうが、かえって落ち着いて受けられます。本人の質問にはごまかさず答える姿勢が大切です。
当院(坂寄歯科)での小児対応 — 三木の臨床現場から
ここからは、取手市の当院で実際にどのように小さなお子さんと接しているかをお伝えします。当院がいちばん大事にしているのは、歯科を"こわい場所"にしてしまわないことです。そのために、いきなり治療には入りません。
当院では、基本的にはトレーニングをしっかりとしてから治療に入っていきます。流れを見せて説明する、という感じですね。お子さんが「次に何をされるか」がわかった状態で進めることを大事にしています。それでもどうしても無理なお子さんは、無理に進めず専門の医療機関を紹介する形をとっています。歯科を"こわい場所"にしてしまわないことを、いちばん優先しています。
取手・藤代の周辺では、ごきょうだいでまとめて通われるご家庭が多いのも特徴です。親御さんが連れて来られず、祖父母の方が付き添って来られるケースもそこそこあります。当院では、お子さん本人だけでなく、付き添う親御さん・祖父母の方にも「どんな声かけをするとよいか」をその場でお伝えするようにしています。家庭での声かけと歯科での対応がそろうと、子どもはぐっと安心しやすくなるからです。
🏠 家庭でできる"歯医者デビュー"の準備
- 痛くなる前に、健診などをきっかけに「何もしない日」から通い始める
- 受診前に「お口を開けて数えるだけだよ」と具体的に伝えておく
- 絵本やごっこ遊びで、口を開ける・鏡を入れる練習をしてみる
- 終わったら結果にかかわらず「最後までできたね」とほめる
うちの子は、食生活をしっかり管理して予防を徹底しているので、誰もむし歯になっていません。歯医者が"治療する場所"になる前に、"何もないけど通う場所"にできたのが大きかったと思います。家では、幼稚園の歯科検診とかでも上手にできるように、口の中に鏡を入れる練習なんかもしていました。痛い思いをする前に慣れておく——これは親の立場でも、本当に効くと感じています。
子どもが怖がるときの家庭での準備や、当院の小児対応の考え方は、子どもが歯医者を怖がるときの対応のページでも詳しくご紹介しています。初めての受診で何をするのかははじめてのお子さんの歯科受診を、小児歯科全般については小児歯科のご案内もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「痛くないよ」と言うのはなぜダメなのですか?
「痛くない」と言われると、子どもは「痛い」という言葉そのものに反応し、かえって「痛いことをされるのかもしれない」と身構えてしまうことがあります。さらに、もし少しでも痛みを感じると「約束が違う」と感じ、歯科や親への信頼が揺らいでしまいます。「お口をピカピカにしようね」など、これから起きることを前向きに具体的に伝える声かけがおすすめです。
Q2. 何歳から歯医者に連れて行くべきですか?
一般的には、最初の歯が生えてくる生後6か月ごろから1歳前後で一度受診するとよいとされています。痛みや困りごとがない時期に「何もしないけど慣れる場所」として通い始めると、歯科に対する苦手意識ができにくくなります。1歳6か月児健診・3歳児健診をきっかけに受診を始めるのもよい方法です。
Q3. 注射(麻酔)のことを子どもにどう説明すればいいですか?
「注射するよ」「痛いことするよ」と先に伝えると、不安が一気に強くなります。基本的には、処置の説明は歯科スタッフに任せていただくのがおすすめです。当院では、その子の年齢や様子に合わせて、わかる言葉で順番に説明してから進めます。家庭では「わからないことは先生に聞こうね」と伝えてもらえると、子どもが安心して質問できます。
Q4. 子どもがどうしても診察台に座ってくれません。どうすればいいですか?
無理に座らせようとすると、かえって歯科がこわい場所になってしまいます。当院では、いきなり治療をするのではなく、まず練習からはじめ、流れを見せて説明してから少しずつ進めます。その日は座れただけでも十分な前進です。どうしても難しいお子さんは、無理をせず専門の医療機関を紹介する場合もあります。
Q5. 兄弟(姉妹)で連れていくときの声かけのコツはありますか?
上手にできたお子さんを「お口を開けられたね」と具体的にほめると、下の子のよいお手本になります。一方で「お兄ちゃんはできたのに」と比べる言い方は、苦手意識やきょうだい間の負担につながりやすいので避けましょう。当院では、ごきょうだいでの通院も多いので、それぞれのペースに合わせて対応しています。
⚠️ 免責事項
この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療方針を示すものではありません。お子さんの性格や発達、お口の状態は一人ひとり異なるため、最終的な判断は歯科医師の診察を受けた上で行ってください。気になる症状や心配ごとがある場合は、早めにご相談ください。
参考文献
- American Academy of Pediatric Dentistry. Behavior Guidance for the Pediatric Dental Patient.
- Dental recall: recall interval between routine dental examinations, NICE Clinical Guideline CG19.
- 厚生労働省「歯科口腔保健の推進について」
- 一般社団法人日本小児歯科学会
お子さんの歯医者デビューや、声かけの仕方について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。当院では、痛い思いをする前から「通うのが当たり前」になる関わりを大切にしています。
【ご予約は24時間可能な便利なWeb予約をぜひご利用ください。】
【お問い合わせ】
坂寄歯科医院
〒300-1512 茨城県取手市藤代503
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