保険のCAD/CAM冠・インレーが割れた・外れたら?作り直す前に確認したい2年ルールと選び直しの判断軸

院長 三木雄斗
三木 雄斗(Yuto Miki, D.D.S.)
坂寄歯科医院 院長・歯科医師|ダイレクトボンディングをはじめとした保存科全般が得意な一般歯科医師
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こんにちは。坂寄歯科医院 院長の三木です。

「保険で入れた白い被せ物が、噛んだときにパキッと割れてしまった」「白い詰め物が、そのままスポッと外れて出てきた」——保険のCAD/CAM冠・CAD/CAMインレーが普及するにつれて、こうしたご相談を受ける機会が増えました。

このとき多くの方が、「また同じものを作ってもらえばいいですか?」とお尋ねになります。もちろんそれも選択肢の一つですが、割れた・外れた理由がそのまま残っていると、同じ経過をたどることがあります。この記事では、作り直しの前に確認しておきたい費用のルール(クラウン・ブリッジ維持管理料、いわゆる「2年ルール」)と、選び直しをどんな軸で考えるのかを整理します。あわせて、まだ分かっていないことも正直にお伝えします。

この記事の要点(直接回答)

  • 保険のCAD/CAM冠・インレーで多いトラブルは割れ(破折)と外れ(脱離)です。まずは受診して、内部の状態を確認します。
  • 被せ物(歯冠補綴物)やブリッジは、装着から2年以内の同じ歯・同じ種類の作り直しについて、装着した医院が費用を負担する考え方(クラウン・ブリッジ維持管理料)があります。インレーは対象外です。
  • 同じものを作り直すかどうかは、歯の残り方・外れた理由・神経の状態・噛む力の4点で判断します。
  • 選択肢は大きく4つ(再度のCAD/CAM/直接法のコンポジットレジン/セラミックによる部分的な修復/全体を覆う被せ物)。歯質が多く残っていれば削る量の少ない方法が候補になります。
  • ただし4つを直接比較した研究はなく、保険のCAD/CAMインレーの長期成績も分かっていません。この記事では限界も明示します。

CAD/CAM冠・インレーが割れたり外れたりするのは、めずらしいことですか?

結論から言えば、めずらしいことではありません。保険のCAD/CAM冠・インレーに使われるのは、樹脂(レジン)にセラミックの粉を混ぜたハイブリッドレジン系のブロックです。金属に比べて色調が自然で、金属アレルギーの心配がないという利点がある一方、材料そのものの強さや、歯に接着させる力の条件は、金属とは異なります

臨床研究でも、CAD/CAM冠のトラブルとして最も多く報告されているのは「脱離(外れる)」で、次いで「破折(割れる)」です。そしてその起こりやすさは、装着した歯科医師の技術だけでなく、土台の高さや傾斜、残っている歯質の量といった、もともとの歯の条件にも左右されることが示されています(Kabetani ら, 2022/Takaesu ら, 2026)。

なぜ「外れる」「割れる」が起きるのか

外れる側の要因としては、土台の形が保持に不利(背が低い・傾斜が急・接着面積が小さい)であること、装着時に唾液で汚染されるなど接着の条件が整わなかったこと(Kawaguchi-Uemura ら, 2018/高橋ら, 2020)、仮づけの材料が残って接着を妨げること(Chaiyabutr ら, 2008)などが報告されています。割れる側では、噛む力の集中や、修復物の厚みが確保できていない部位への負担が関わります。詳しくは詰め物・被せ物が何度も取れるのはなぜ?でも解説しています。

大切なのは、「割れた・外れた」という結果だけを見ないことです。同じ「外れた」でも、接着だけの問題だったのか、内部でむし歯が進んでいたのか、歯そのものにひびが入っていたのかで、その後にとるべき手立てはまったく変わります。

まず確認:装着から2年以内なら、作り直しの費用はどうなる?

意外と知られていないのが、保険診療におけるクラウン・ブリッジ維持管理料という仕組みです。これは、被せ物やブリッジを装着した医院が、その後の維持管理に責任をもつという考え方にもとづくもので、届出をしている医院では次のように扱われるのが一般的です。

いわゆる「2年ルール」の考え方

  • 対象:被せ物(歯冠補綴物)とブリッジ。インレー(部分的な詰め物)は含まれません
  • 期間:装着した日から2年以内。
  • 範囲:同じ歯に、同じ種類のものを作り直す場合。
  • 医院:装着した医院での対応が前提です。他の医院で装着したものは対象外です。

※ 取扱いはケースによって異なります。まずは装着した医院にご確認ください。当院はクラウン・ブリッジ維持管理料の届出を行っています。

ここで注意していただきたいのは、「2年以内だから何でも無料」ではないという点です。たとえば、内部で二次う蝕(再びのむし歯)が進んで治療内容そのものが変わる場合や、同じ種類ではなく別の方法へ切り替える場合、あるいは歯を抜かざるを得ない場合は、扱いが変わります。ですので、「まず受診して、中がどうなっているかを確認する」ことが出発点になります。

また、割れたCAD/CAM冠をそのままにしておくと、欠けた縁にプラーク(歯垢)がたまりやすくなり、内部でむし歯が進むことがあります。痛みがないからと様子を見ているうちに、2年の期間が過ぎてしまうこともあります。詰め物・被せ物が取れたときの対応もあわせてご覧ください。

同じものをもう一度作れば解決しますか?

「割れたので、同じものをもう一度」——これは自然な発想ですし、条件が整っていれば妥当な選択でもあります。実際、外れた原因が接着面の一時的な問題だけで、歯質が十分に残っていて、噛む力も特別強くないのであれば、同じ材料で作り直して長く安定することは珍しくありません。

一方で、次のような背景があるときは、同じ材料・同じ設計のまま作り直しても、同じ経過をたどることがあります。

つまり、「同じものを作るか、設計や材料そのものを見直すか」は、割れた・外れた理由を確かめてから決めるのが筋道です。当院では、外れたものと歯の両方を実際に見て、どこが壊れたのか(歯側なのか、修復物側なのか、接着面なのか)を確認したうえでご提案しています。

割れた・外れた後の選択肢は大きく4つ

再治療の選択肢は、おおむね次の4つに整理できます。どれが上位・下位ということではなく、歯の条件によって適する範囲が違うとお考えください。

保険のCAD/CAM冠・インレーが割れた・外れた後の再治療の選択肢を4つに整理したインフォグラフィック。①再度のCAD/CAM(保険) ②直接法のコンポジットレジン ③セラミックによる部分的な修復 ④全体を覆う被せ物、それぞれの削る量と適する条件を並べた図
割れた・外れた後の再治療の選択肢4つ(削る量と適する条件の整理)

① 再度のCAD/CAM(保険診療)
歯質が十分に残っていて、外れた原因が接着条件にとどまる場合の第一候補です。費用の負担が軽く、金属を使わない点も変わりません。ただし、割れ・外れの背景が残ったままだと、再発の可能性はついてまわります。

② 直接法のコンポジットレジン(ダイレクトボンディング)
型取りをせず、その場で樹脂を積み上げて形を作る方法です。欠けた範囲が限られていて、歯質が比較的多く残っているケースに向きます。削る量を最小限にできるのが最大の利点です。当院では自費診療として、1歯につき税込50,000円、治療回数の目安は1〜2回(1回あたり約45〜75分)でご案内しています。詳しくはダイレクトボンディングのページをご覧ください。

③ セラミックによる部分的な修復
歯全体を覆わずに、失われた部分だけをセラミックで補う方法です。強度と適合の面で有利ですが、適応できる歯の条件は限られます。費用は形態や範囲によって変わりますので、診査のうえでご案内しています。

④ 全体を覆う被せ物(クラウン)
歯が大きく失われている場合や、割れの範囲が広く残った歯質を守る必要がある場合の選択肢です。当院のオールセラミッククラウンは税込140,000〜180,000円/本、通常2〜4回(型取り → 仮歯 → セット)が目安です。主なリスクとして、硬いものの咬み込み等で欠け・脱離が生じる場合があること、補綴物の変色・着色が生じる場合があること、治療後に冷温水痛・咬合痛が生じる場合があることが挙げられます。

「被せるか、できるだけ残すか」という考え方そのものについては、奥歯は被せたほうがいい?できるだけ残したほうがいい?でも詳しく解説しています。また、すでに神経の治療を受けた歯の再治療については再治療についてもご参照ください。

どの選択肢を選ぶかは、何で決まりますか?

当院では、次の4つの軸で選び直しを考えています。

再治療の選び直しを判断する4つの軸をまとめたインフォグラフィック。①歯の残り方(残存歯質の量) ②外れた理由(接着・二次う蝕・破折) ③神経の状態(生活歯か失活歯か) ④噛む力(食いしばり・歯ぎしり・咬合の偏り)を並べた図
選び直しの判断軸4つ(歯の残り方/外れた理由/神経の状態/噛む力)

① 歯の残り方
どれだけの歯質が残っているかは、接着の面積と、修復物を支える形の両方に効きます。多く残っていれば削る量の少ない方法(②③)が候補になり、大きく失われていれば全体を覆う方法(④)が適することがあります。

② 外れた理由
接着面だけの問題だったのか、内部で二次う蝕が進んでいたのか、歯側が欠けたのか、修復物にひびが入ったのか。ここが変わると、次にとるべき方法も変わります。

③ 神経の状態
神経が生きている歯(生活歯)か、すでに根管治療を受けた歯(失活歯)かで、歯質のしなやかさや割れやすさが異なります。失活歯では、残った歯質を守る設計をより重視します。

④ 噛む力
食いしばりや歯ぎしりの習癖、噛み合わせの当たり方の偏りは、割れ・外れの再発に直結します。ここに手を入れずに修復物だけを作り替えても、同じ力が同じ場所にかかり続けます。

この4つを診てから、はじめて「同じもので良いか」「設計を変えるか」「材料を変えるか」を決めます。逆に言えば、この確認をせずに作り直すと、判断の根拠が「前と同じだったから」だけになってしまいます。

正直に言うと、まだ分かっていないこともあります

ここまで整理してきましたが、この分野には研究として確立していない部分がまだ多くあります。患者さんに選んでいただく以上、分かっていないことは分かっていないとお伝えするのが誠実だと考えています。

現時点で分かっていないこと(エビデンスの限界)

  • 5年を超える長期のデータがそろっていません。保険のCAD/CAM冠が広く使われるようになってからの期間がまだ短く、長期予後の全体像は分かっていません。
  • 保険のCAD/CAMインレーについては、長期成績の一次情報がありません。冠に比べて報告そのものが少ない状況です。
  • この4つの選択肢を直接比較したランダム化比較試験(RCT)はありません。それぞれ別々の研究で報告されているため、単純な優劣の比較はできません。
  • 歯ぎしり・食いしばり(ブラキシズム)が再発リスクを何倍にするか、定量的な数値は確認できていません。臨床的に関連は認識されていますが、数字として確立したものではありません。
  • 保険のCAD/CAM冠の二次う蝕がどれくらいの割合で起きるかについて、独立した報告が見当たりません。

ですので、「この方法なら何年もちます」という言い方は、当院ではしていません。できるのは、いまの歯の条件を丁寧に確認して、条件に合う方法を一緒に選び、その後の経過を見ていくことです。

院長から一言

取手・藤代の周辺は、お車での通勤や、お仕事帰り・土曜にまとめて通われる方が多い地域です。デスクワークや運転中に、気づかないうちに歯を食いしばっている方も少なくありません。当院では「力」が疑わしいとき、いきなりマウスピースを作るのではなく、まずは日中の歯の接触をご自身で意識して離していただくTCH是正の指導から始めます。それで改善が不十分なときに、はじめてマウスピース(ナイトガード)などの併用を検討します。装置に頼る前に、まず力のかかり方そのものを見直すという順番を大事にしています。

— 院長 三木雄斗

できるだけ早めに受診していただきたいサイン

  • 割れた縁が舌や頬に当たって痛い、傷ができている
  • 外れた部分に食べ物が詰まりやすい、においが気になる
  • 冷たいもの・熱いものが強くしみる、噛むと痛む
  • 歯ぐきが腫れている、押すと痛い
  • 外れたまま1週間以上経っている(歯が動いて元に戻らなくなることがあります)

よくある質問(FAQ)

Q1. 保険のCAD/CAM冠が割れました。作り直しの費用は自己負担になりますか?

装着した医院がクラウン・ブリッジ維持管理料の届出をしている場合、同じ歯に同じ種類の被せ物を装着から2年以内に作り直すときは、その医院の負担で対応するという考え方が一般的です。ただし対象は被せ物(歯冠補綴物)やブリッジで、インレー(部分的な詰め物)は含まれません。他の医院で装着したものも対象外です。取扱いはケースによって異なりますので、まずは装着した医院にご確認ください。

Q2. CAD/CAMインレーが外れました。そのまま付け直してもらえますか?

外れたものと歯の状態によります。内部に二次う蝕がなく、修復物にも歯にも欠けやひびがなければ、再装着できることがあります。一方、中でむし歯が進んでいたり、歯側が欠けていたり、修復物にひびが入っている場合は、作り直しや別の方法への変更が必要になります。診察で内部を確認してから判断します。

Q3. 同じ保険のCAD/CAM冠をもう一度作れば解決しますか?

割れた・外れた理由がそのまま残っていると、同じ経過をたどることがあります。歯の残っている量が少ない、強い咬合力がかかっている、接着に不利な条件があるといった背景があるときは、同じ材料で作り直すだけでなく、設計や材料そのものを見直す選択肢も検討します。

Q4. 割れたCAD/CAM冠の代わりに、ダイレクトボンディングやセラミックにできますか?

歯の残り方によります。歯質が比較的多く残っていて欠けている範囲が限られていれば、直接法のコンポジットレジン(ダイレクトボンディング)やセラミックによる部分的な修復が候補になります。歯が大きく失われている場合や割れの範囲が広い場合は、歯全体を覆う被せ物のほうが適することがあります。自費診療となる方法の費用と回数の目安は記事内に記載しています。

Q5. 割れたまま様子を見ていても大丈夫ですか?

割れた部分や外れた部分はプラークがたまりやすく、内部でむし歯が進んだり、露出した歯質が欠けたりすることがあります。痛みがなくても、できるだけ早めに受診して状態を確認することをおすすめします。

⚠️ 免責事項

この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療方針を示すものではありません。CAD/CAM冠・インレーが割れた・外れたあとに適する方法は、歯の残り方や噛み合わせなど一人ひとりの条件によって異なります。また、保険の取扱いは制度改定やケースによって変わることがあります。最終的な判断は歯科医師の診察を受けた上で行ってください。掲載している自費診療の費用はすべて税込の目安金額で、口腔内の状態により異なる場合があります。効果・経過には個人差があります。

参考文献

  1. Kabetani T. et al. 小臼歯のCAD/CAM冠の脱離・破折に関する臨床的検討. 2022.
  2. Takaesu Y. et al. 前歯部補綴装置の生存と支台歯形態に関する臨床研究. 2026.
  3. Kawaguchi-Uemura A. et al. 唾液汚染が接着強さに及ぼす影響. 2018.
  4. 高橋ら. レジン系材料への唾液汚染と接着強さに関する実験的研究. 2020.
  5. Chaiyabutr Y. et al. 仮着材汚染後の表面処理が接着に及ぼす影響. 2008.
  6. Piemjai M. et al. 接着様式の違いと二次う蝕・脱離に関する長期研究. 2022.
  7. Chaar MS. et al. 補綴装置のトラブル原因に関する長期臨床研究. 2020.
  8. Miura S. et al. 補綴装置の保持喪失と支台歯条件に関する臨床研究. 2019.
  9. 特定非営利活動法人日本歯科保存学会「う蝕治療ガイドライン」
  10. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)添付文書情報

 

保険のCAD/CAM冠・インレーが割れた、外れたということでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。まず何が起きたのかを一緒に確かめたうえで、その歯をできるだけ長く保たせる方法を考えていきます。

当院では、治療が終わったあとも、むし歯や歯周病を繰り返しにくい状態を一緒に維持していくことを大切にしています。予防やメインテナンスについては予防歯科のページもご覧ください。

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